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作戦開始時刻は朝の四時

掲示板での情報収集の結果、ネオフラミンゴでの並び開始は4時半に決定。

当日は4時に起床して作戦行動を開始しよう。

が・・・・

 

実は「天使ちゃん争奪戦」への参戦を決意した時点である一つの問題に気がついていたのである。

つまり、極寒の中で長時間立ち続けなければならない事による「どうしてもトイレ行きたくなっちゃう問題」

こればかりはもうどうしようもない。

 

掲示板を見ていると並び直すように言われたりすることもあるみたいで、そんな事だけは絶対に避けなければいけないし、

「すいません、ちょっとトイレ行ってくるんで荷物みててもらって良いですか?」

なんて言える根性ないし。

 

そもそもトイレどこにあるのよ?

 

しかもまだ自分しか並んでない時にトイレ行きたくなっちゃって、急いで行って戻ってきたら二番目の人が居たとかなったらもう・・・、

 

もはやその人が一番じゃない!

 

「すいません実は私先にそこに居たんですよ・・・」とか言えるわけない。

絶対に、絶対にトイレに行くという行為だけは回避しなければならない・・・・

という固い決意を心に誓った結果出した答えは。

 

「19時以降水分の摂取は禁止」

 

人間ドッグで水分の摂取が禁止される前日の夜22時よりも、3時間も早い19時から水分の摂取完全禁止を自分に課す。もはや本気度が違うのだ。

まぁ、翌日4時半から並ぶからね・・・・

 

仕事が終わり川崎に降り立った時点で18:30を過ぎていた、急いで食事を済ませて最低限の水分を摂取。

あとはとにかくたくさんの「おしっこ」をしよう!

 

そして今夜の宿泊地へと足を向けた。

 

カプセル&サウナ 川崎ビッグ

決戦前夜である。

 

「ピンサロへ行くために前泊をする」

 

まさか自分にこんな日がやってくるとは思わず、ここ最近でぐっと急成長を遂げた自分自身に感慨深さを感じながら降り立った川崎駅。

今日1日の仕事の疲れを癒やし、厳しい戦いが予想される明日の早朝に備えゆっくりと体を休める場所を確保しなければならない。

しかし費用は抑えめでお願いしたい。

そんなわがままを叶えてくれる場所が「カプセル&サウナ 川崎ビッグ」であった。

 

戦いの場になる「川崎 ネオフラミンゴ」へは徒歩で10分もかからない距離、大浴場があるのがありがたい。

手短に夕食を済ませて川崎ビッグへチェックイン。

大浴場にて湯船にゆっくりと浸かり、明日1日の流れを入念にイメージトレーニング。

明日はいよいよ待望の天使ちゃんとのご対面、もはや勝ちは確定したも同然。

どうせ一度しか会えないのだから、ここはロングコースでいっとく?

せっかくだからVIPシートとやらもお願いしちゃうかっ(照

久しぶりに泊まるカプセルホテルにワクワクしつつ、フロアの静寂さとは裏腹にけんたろうの心は浮き足立ってしまうのでした(笑

 

おやすみなさいっ!!

 

大浴場で身を清め、よいよ決戦の地へ

おはようございますっ!!

アラームの音を聞く事なく、不思議なくらい4時直前に目が覚める。

こういう時の人間の集中力というのは本当にすごい。

 

目が覚めてからの行動は前日にシミュレーション済みで、考える事なく素早く行動に移す。

心配していた尿意はほとんどないが、ダメ押しの最後のトイレで振り絞る。

手早く荷物をまとめて大浴場へ移動し、天使ちゃんに失礼の無いよう身体中をピカピカに磨き上げたあとは最重要項目のヒゲ剃り・・・・

キスやクンニの際にたわしのようなアゴで天使ちゃんを傷つけるような事だけはあってはならない。

が、川崎ビッグ備え付けのカミソリを使ってしまったせいでカミソリ負けをしてしまうと言う大ハプニング発生。

めんどくさがらずに自前のカミソリ持ってくるんだった・・・

 

爪切りとやすりがけは前日にバッチリ済ませてある。

これで天使ちゃんに会う準備はバッチリだ。

 

ユニクロのヒートテック上下に厚手のシャツを着込み、お腹と胸、腰と背中の合計四カ所に「貼るホッカイロ」を装着。

ダウンを着込んでその両ポケットにはそれぞれ「貼らないホッカイロ」。

手袋を装着したら準備は完了。

お世話になった川崎ビッグに心の中で一礼をし、さっそうと早朝の川崎を歩く。

 

時刻はちょうど四時半。

予定より少し押していることに焦りを感じ、自然と小走りにネオフラミンゴを目指す。

もうちょっと、もうちょっとでネオフラミンゴが見えてくる。

 

お願いだから、お願いだから誰も居ないでくれ・・・・・

 

 

・・・・・・居ない

 

 

・・・やった、やったぞ。誰もいないっ!!

 

俺が一番乗りだぁぁ!!

 

 

街頭に照らされて、思ったよりも明るい三角公園を眺めながらほっと安堵する。

 

いや、違う。

確かに並び一番は確保した、でもこれからこの並び一番を守らなければならないんだ。

本当の戦いは今から始まるんだと気合いを入れ直し、僕は背中に背負ったリュックをそっと店の前に置いた。

 

圧倒的達成感、そして次の現実

ところで・・・・これどこに並べばいいの?

新たな問題発生である。

そういえばネオフラミンゴに来店することも初めてなら、当然行列に並んだこともないのだ。

「うーん、とりあえずシャッターの所が一番近いからここにしとくか。」

とリュックを置いたのがトップの画像である。

 

さっきまでの焦りは嘘のように、しばらく誰も来そうにない雰囲気に気をよくした自分は三角公園周辺をふらふらと歩き回り時間を潰す。

周囲を警戒しながら、時々人影が近づくと焦って所定の位置にダッシュで戻り並び一番を確保する。

まるで缶を守る「缶蹴りの鬼」を1人で繰り広げる三角公園周辺のシュールな光景。

よく通報されなかったな・・・・

 

川崎ビッグの大浴場で温まった体が芯まで冷える頃、自分の高揚感もすっかりと冷え、急に現実に引き戻される。

これからしばらくの間ここで立ちすくんでいなければいけないのだ。

圧倒的寒さと孤独感が襲ってくる。

この後に待ち構えている「夢のようなひと時」がとても本当に訪れるとは思えない程の過酷な状況に思わず強く願った

 

頼むっ!!早く誰か来てっ!!

 

 

現れる仲間たち、そしてライバル

スマホをネットラジオに繋いでなんとか時間を潰していた5時半頃、サングラスをかけた男性が、脇目も振らずにこちらに向かってくるのが見えた瞬間に気がついた。

仲間だっ!

彼は迷う事なく店の前まで歩みを進め、そして小さな折りたたみ式の椅子を取り出したのだ。

そうだ、確実にそうだ。

彼があの掲示板で話題になっていた人に違いない。

 

彼は今何を思っているのだろうか?

動揺しているのか?1番じゃなかったから動揺しているのか?

 

いや、そんなそぶりは(サングラスをしているから)全くわからないな。

「天使ちゃんの口開けはいただいたぜっ!」

と心の中で勝ち誇っていたのだが、一つ気になったことが・・・・

 

座る場所(俺から)遠っ!!!

 

え、そこなの?

もしかしてそこが先頭の位置なの?

 

折りたたみ椅子の彼が座ったのはお店のほぼ角のあたり。

自分から3メートル程も離れた位置に座られると流石に不安になるわ。

いや、確かに朝の5時からおっさん2人が身を寄せ合って震えてる絵もどうかとおもうけどね?

でも確かにその場所、なんかそれっぽい場所なのよね〜

 

しばらくするとおもむろに立ち上がる折りたたみ椅子の彼。

何をするかと見ていたら、自販機の前に立って何やら思案・・・・と缶コーヒーを購入。

 

え、まじで?

おしっこ出るよ?缶コーヒーの利尿作用ハンパないんだから。ドエムなの?

それにそろそろ3番目の人も来るだろうし・・・・と思っていたら飲まずに体を温め始める折りたたみ椅子の彼。

 

3番目の人が来たら、「2番目の人が今おしっこで席外してるみたいなんですぅ〜」って俺がフォローしなきゃいけないのかと無駄な心配をしてしまったじゃないか。

 

3番目の人が現れたのは、折りたたみ椅子の彼の約1時間後。

その彼は折りたたみ椅子の彼のすぐそばに立ち鞄からニンテンドーDSをプレイし始める。

 

ネオフラミンゴの店前ど真ん中に立つけんたろうと、店の端にたたずむ2人のおっさん。

 

うん、確かにその場所の方が目立たなくていいよね。

俺なんか思いっきりセンターに立っちゃってるもんね。

 

その頃になると太陽も登りだし、明るくなった街の通りを通勤の人たちが歩いてゆく。

4人目以降もパラパラと列に並び始めると、余計にポツンと離れた自分の存在が目立ってしょうがない。

通り過ぎざまに明らかに見られているような錯覚におちいるが、今更この場所を動くわけにはいかない。

いや、意地でも動かないぞ!

 

そして心配していた尿意も無事に感じることなく、いよいよ整理券配布の時間が近づいてくるのでした。


「後編」「補足・解説編」に続きます。

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